消費税とは?(小規模事業者の参考ポイント)

   

■納税義務

 消費税の計算の基礎となる期間を課税期間といいます。個人事業者であれば1月1日から12月31日までが課税期間となり、法人にあってはその事業年度( 事業年度が1年を超える場合は1年ごとに区分した各期間 )が課税期間となります。

 消費税の納税義務を判断するために基準期間における課税売上高というものを用います。この基準期間における課税売上高が3000万円以下の事業者については納税義務が免除されます。ただし、選択により納税義務者となることも出来ます。

 基準期間とは個人事業者にあってはその年の前々年、法人にあってはその事業年度の前々事業年度( 前々事業年度が1年未満のときはその事業年度開始の日2年前の日の前日から1年以内に開始する各事業年度を合わせた期間 )を言います。

1期 2期 3期 4期 5期 6期 7期

 例えば、事業年度が1年である法人の6期の基準期間は4期となります。

 基準期間における課税売上高は課税取引に該当する売上高の合計額から消費税額を控除した金額を言います。


■消費税の仕組み

 消費税とは事業の売上(物品販売やサービスの提供など)に対して課される税金です。日本の消費税には「消費そのものについて広く負担を求める」という主旨が含まれていますので、金融取引や資本取引など、とくに非課税とされているものを除いて、原則としてすべての国内取引が課税対象となります。

 ご存じのとおり、消費税の最終的な負担者は消費者です。ということは、生産や流通の段階で課税してしまうと二重、三重に課することになってしまいます。ですから、製造業・卸売業・サービス業などの各段階の事業者がダブッて消費税を納めないよう、売上にかかる消費税額から仕入にかかる消費税額を控除する仕組みになっています。

 たとえば、卸売業者が製造業者から1万円(税抜)で商品を仕入れたとします。これにかかる消費税は500円です。この商品を、卸売業者は小売業者に税込3万1500円で出荷しました。この場合、卸売業者が納める消費税額は、出荷のときに上乗せした1500円から仕入のときに負担した500円を差し引いた1000円ということになります。

 整理すると、納付すべき消費税額は基本的には

課税売上高(税抜)×5%(仮受消費税)−課税仕入高(税抜)×5%(仮払消費税)


で求められることになるわけです。先ほどは単純な例で説明しましたが、「課税仕入高」には、商品仕入だけでなく課税対象とされるすべての経費も含まれます。
 この基本的な考え方によると、課税取引さえ把握できれば、消費税額の計算は簡単なように思われます。しかし実際は、この仮払消費税はどの取引に対しても全額控除できるわけではありません。

 仮払消費税がいくら控除できるのかを明らかにするためには、まず事業者が行なう個々の取引について
・課税対象外(不課税)取引
・非課税取引
・課税取引(5%課税)
・輸出免税取引(0%課税)
のどれに該当するのかを区分する必要があります。
 このうち、消費税の計算に影響する取引(課税対象取引)は、「非課税取引」「課税取引」「輸出免税取引」の三つです。




■取引の区分の仕方

1.課税対象取引の判定

 次の(1)〜(4)すべてにあてはまる場合は、課税対象取引となります。

(1)国内取引である
 物品の販売やサービスの提供が行なわれた場所で判断します。
 たとえば、日本の事業者が海外で有する物件を貸し付けた場合は、国外取引(対象外取引)に該当します。

(2)事業者が事業として行なっている
 法人は、全取引が対象となりますが、個人事業者については反復、継続かつ独立して対価(収入)を得る取引が課税対象となります。
 たとえば、家庭で使用しているテレビなどの生活用資産の売却は、この対象とはなりません。

(3)対価(収入)を得て行なわれている
 無償で行なわれる取引については、原則として課税対象となりません(譲渡とみなされる場合、たとえば法人の役員に対する資産の贈与などは課税対象となります)。

(4)物品販売やサービスの提供に該当する
 これについては事例で確認する方が分かりやすいでしょう。物品販売やサービスの提供に該当しない、つまり課税対象外の取引例をあげておきます。
・受取保険金
・損害の発生に伴なう損害賠償金
・町内会費や法人会費など、会員が納める会費(ある団体の維持・運営のための会費なので、雑誌の購読料などは除きます)
・出資に対する受取配当金
・寄付金、祝い金、見舞金など
・補助金、奨励金、助成金など

2.非課税取引の判定

 消費税は、原則として国内におけるすべての物品販売やサービスの提供が対象となることはすでに述べましたが、次の観点から非課税とされる取引があります。
(1)消費に対して税負担を求めるという消費税の性格から、課税対象とすることになじまないもの
(2)社会政策的な配慮に基づくもの
 これだけでは少し分かりにくいので、代表的な例で確認しましょう




【間違いやすい取引】

(1)土地の譲渡及び貸付
 土地の譲渡及び貸付は非課税とされていますが、土地の貸付のうち貸付期間が1ヵ月に満たない場合、及び駐車場などで施設を整備・管理をしている場合の貸付は課税となります。

(2)有価証券等の譲渡
 ゴルフ会員権は、株式の形態をとっていても譲渡した場合は課税となります。

(3)切手、商品券、プリペイドカードなど
 原則として非課税とされますが、贈答用ではなく社内の業務品を購入するために使用する場合は、購入時に課税扱いとすることが認められています。

(4)住宅の貸付
 住宅の貸付のうち、貸付期間が1ヵ月未満のものや、旅館・ホテルなどの貸付は課税となります。

3.輸出免税取引

 国外に輸出される物品については、その輸出先の国においてそれぞれの国の内国消費税が課税されます。したがって、国際間の二重課税を避けるため、消費税は免除とされています。
 なお、取引の分類としては、課税対象取引の中の課税取引(0%課税)とみなされます。

■仮払消費税はいくら控除できる?

 始めにお話したように、すべての事業者が、仮払いした消費税額を全額控除できるとは限りません。原則として、課税売上に対応する(つまり課税売上を生じさせるために支出した)課税仕入に対して支払った消費税額のみを、仮受消費税から控除することができます。逆にいうと、非課税売上に対応する仕入にかかった消費税額は、仮受消費税から控除することはできません。
 具体例を見てみましょう。駐車場の貸付(課税取引)とアパートの貸付(非課税取引)をあわせて行なっている事業者です。




 アパート管理経費10万円にかかる仮払消費税5000円は、アパートの貸付(非課税取引)に対応する仮払消費税ということになります。ですから、納付すべき消費税額の計算上、仮受消費税からマイナスする(税額控除する)ことはできません。

 したがってこの事業者が納付すべき消費税額は、駐車場の貸付に対応した1万円―1000円=9000円となります。
 このように、課税・非課税の区別のしやすい取引は問題ありませんが、なかにはどの課税仕入がどの売上に対応するのか、判断が難しい場合もあるでしょう。
 そこで、課税対象となる売上高のうち、課税売上高の占める割合がどれくらいあるか(これを「課税売上割合」といいます)を明らかにすることによって、控除できる仮払消費税額が計算できるようになっています。課税売上割合は次の算式で求められます。

    課税売上高(税抜)    
課税売上高(税抜)+非課税売上高


 計算する際は、次の点に注意しましょう。
(1)輸出免税取引は課税売上(0%課税)とみなされるため、分母及び分子に含まれます。

(2)非課税売上高には、有価証券譲渡対価×5%相当額を含めます。有価証券は、本来売買益を得るために売却するので、便宜上対価(収入)に5%を乗じて売上とみなします。
(3)課税対象外取引は、計算に一切関係しません。

■課税売上割合のボーダーラインは95%!

 計算の結果、課税売上割合が95%以上の事業者は、計算の簡便化を図るため、課税仕入等の税額について全額を控除対象とすることができます。
 したがって、課税売上割合の計算をしてこの基準がクリアできれば、課税仕入の対応関係を明らかにする必要はなくなります。

 一方、課税売上割合が95%未満だった場合は、仮払消費税のうち、課税売上に対応する課税仕入高にかかる消費税分だけを仮受消費税から控除することができます。
 ですから、課税仕入高に係る消費税額を
(1)課税売上にのみ対応するもの
(2)課税売上以外の売上にのみ対応するもの
(3)共通に対応するもの
と区分した場合、控除する仮払消費税額は、(1)+(3)×課税売上割合となります。この計算方法を「個別対応方式」といいます。

 ただし、先に述べたとおり課税仕入がどの売上に対応するかを判断することが困難な場合もありますので、その場合は、すべての課税仕入高に係る消費税額に課税売上割合を乗じた額を控除することもできます。この方法を「一括比例配分方式」といいます。
 以上のように、課税売上割合が95%を切ると、納付すべき消費税額について大きな差が発生する場合があります。とくに売上に関する取引については、それが課税対象なのか非課税なのかなど、しっかり把握することが大切になってきます。

 消費税額の計算については、このほかにも免税事業者の適用や、課税売上高から概算して消費税額を求める簡易課税の適用など、いろいろな規定があります。あらかじめ税務署に提出する届出書が必要となる場合がありますので、消費税の制度についてあらましだけでも押さえておくとよいでしょう。

〔月刊 経理WOMAN〕作成日:2001/09/26